現在の鉄鋼市場の状況は、緩やかながらも着実な回復を見せています。世界の鉄鋼需要は今後1年間で再び増加すると予測されていますが、高金利やその他の国際的な影響、そしてミシガン州デトロイトにおける米国自動車労働者のストライキは、引き続き需要と価格の変動に寄与し、鉄鋼業界の将来に影響を与えています。
鉄鋼業界は世界経済にとって不可欠な指標です。近年の米国の景気後退、高インフレ率、そして国内外のサプライチェーン問題は、鉄鋼市場の現状を左右する主要な要因となっていますが、2023年にかけて多くの国で見られた鉄鋼需要と成長率の漸進的な改善を阻害するほどのものではないようです。
世界鉄鋼協会(worldsteel)は、最新の短期展望(SRO)レポートで、2023年に2.3%の回復を見せた後、2024年には世界の鉄鋼需要が1.7%増加すると予測しています。世界有数の鉄鋼産業である中国では減速が見込まれるものの、世界の大半の国では鉄鋼需要の増加が見込まれています。さらに、国際ステンレス鋼フォーラム(worldstainless)は、2024年の世界のステンレス鋼消費量が3.6%増加すると予測しています。
パンデミック後の経済回復が一巡した米国では、製造業の活動は減速しているものの、公共インフラやエネルギー生産といったセクターでは成長が続くと予想されます。米国の鉄鋼使用量は、2022年に2.6%減少した後、2023年には1.3%回復し、2024年にかけて2.5%の増加が見込まれています。
しかし、今年残りの期間と2024年にかけて鉄鋼業界に大きな影響を与える可能性のある予期せぬ変数が1つあります。それは、全米自動車労働組合(UAW)と「ビッグ3」自動車メーカー(フォード、ゼネラルモーターズ、ステランティス)の間で進行中の労働争議です。
ストライキが長引けば長引くほど自動車の生産台数は減少し、鉄鋼需要も減少します。アメリカ鉄鋼協会によると、平均的な自動車の材料の半分以上は鉄鋼で、米国国内の鉄鋼出荷量の約15%が自動車産業向けです。熱延鋼板およびフラットロール鋼板の需要減少と自動車製造における鉄スクラップの減少は、市場で大きな価格変動を引き起こす可能性があります。
自動車製造業では大量の鉄スクラップが発生するため、ストライキによる鉄鋼生産と需要の減少は、鉄スクラップ価格の急騰につながる可能性があります。一方で、市場に数千トンもの未使用製品が残っていることも、鉄鋼価格の下落につながっています。EUROMETALの最新レポートによると、熱延鋼板と熱めっき鋼板の価格はUAWストライキの数週間前から下落し始め、2023年1月初旬以来の最低水準に達しました。
ワールドスチールのSROは、米国の自動車および小型車の販売が2023年に8%回復し、2024年にはさらに7%増加すると予測されていると指摘している。しかし、ストライキが販売、生産、ひいては鉄鋼需要にどれほど深刻な影響を与えるかは不明である。
投稿日時: 2023年12月12日